高齢者のむくみについて2
前回は”高齢者のむくみについて1”でつらづらと長文を、失礼しました。
まだまだ、続きます! kokohanaナースセラピストの木下です。
今回は2.高齢者に起こりやすいむくみと、3.危険なむくみの見分け方についてです。
2.高齢者のむくみについて
1)高齢者のカラダ
一体、高齢者のカラダはどのような変化をきたしてくるのでしょうか?
とても、個人差があって、一概には言えませんが一般的な傾向を挙げていきます。
① 皮膚の老化・・・・膠原繊維と弾性繊維(うるおいとハリ)機能の低下によって
シワやたるみが出来ます。皮膚の張りがなくなり皮下組織圧が低下します。
② 血管の老化・・・・動脈硬化や糖尿病などにより血行障害がおこりやすい。
③ 運動量の低下・・・・筋肉を動かす量が減り筋ポンプの低下がおこりやすい。
④ 持病率が高い・・・・脳梗塞、高血圧、心臓病、糖尿病、腎臓病など持病を持つ率が多くなる。
⑤ 栄養低下傾向・・・・食事量が減り、栄養不足傾向となり、蛋白不足となりやすい。
*疾患とむくみの関係
心疾患・・・心臓のポンプ機能の低下で全身に血液を押し出す力が低下、心臓に血液が戻れず足先に
溜まってしまいむくみます。
糖尿病・・・血中に糖分が増え血管を痛めて血流が悪くむくみやすくなります(血行障害)。
そして、糖分は末梢神経に引っ付き神経を痛めて 神経麻痺や鈍麻となり、
けがをしても気が付かず、また、傷の治りも悪く、悪化しやすいです。
高血圧・・・血管に常に高圧の負担がかかり、血管が痛み動脈硬化を起こしやすくなります(血行障害)。
2)高齢者におこりやすいむくみ
むくみには様々な原因(内科的疾患、栄養、薬の副作用、血管トラブル、感染症やアレルギーなど)
により起こり、また、様々なむくみ方があります。
その中で高齢者のカラダの変化により起こってきやすいむくみは次のようなものがあります。
① 静脈性浮腫 ・下肢静脈瘤・・・30代以上の女性の62%の頻度であります。
本来、静脈は心臓に向かうために逆流しないための弁が壊れて
逆流して血管内圧が高まって瘤が出来ます。
初期は無症状ですが症状が進むと重だるい、痒い、血流不良となっていき
皮膚に湿疹や赤黒くなり、潰瘍が出来ます。
・深部静脈血栓症・・・太ももの深い所にある太い静脈(足の血液の90%以上を心臓に送る)
に血栓ができれば足の血液を心臓に十分戻すことが出来なくなり、
足に多量の血液が溜まり、足は赤紫色に腫れる。その血栓が剥がれて血流に
のり肺動脈に詰まったら肺塞栓(エコノミークラス症候群)となる。
小さいものは、無症状。大きいものなら胸痛、呼吸困難、時には死に至ります。
② 廃用性症候群によるむくみ
病気、けが加齢による活動が低下、痛み、認知症、精神的な問題などで、ベットで寝て過ごすことが
多くなると、筋力の低下、筋委縮(約1~3%/日、10~15%/週 筋力の低下)、関節拘縮、骨委縮になります。
また、筋肉を動かさないことにより、血流も悪くなる。血流が悪くなることにより血栓を起こしたもする。
座って過ごすことが多い方は膝から下、特に足の甲にむくみが出てくる。
③ 麻痺性浮腫によるむくみ
脳梗塞の後遺症で麻痺にある方は麻痺のために十分動かすことが出来ず、廃用症候群と同じような状態になる
足だけではなく、麻痺のある個所にむくみが出てくる。
④低栄養(低アルブミン血漿、低蛋白血漿)によるむくみ
栄養が十分に摂れないことにより血液中のアルブミンというたんぱく質が減り、血漿膠質浸透圧
(質量が高い方から 低い方へ流れていく性質)により、血管から水分が外に移動し皮下組織に
水分が溜まってしまう。
足に出ることが多く、皮膚に触るとひんやりしている。
3、危険なむくみの見極め
むくみは自然と治るむくみからすぐに治療を要するむくみまで様々あります。
日常に溢れているむくみの中で、治療を要する危険なむくみを見つけるポイントは、どんなサインでしょうか?
1)片方だけ皮膚の色がおかしい・・・炎症、感染症、重度静脈瘤、重度静脈血栓症など疑います。
2)片方だけ痛みがある・・・重度静脈瘤、重度深部静脈血栓症、炎症、感染症、骨折など疑います。
3)血管に沿って赤くなっている・・・血管炎、リンパ管炎など疑います。
4)心疾患を持っていてむくみが片方だけひどくむくんできた・・・心疾患の悪化を疑います。
5)片方だけ熱感がある・・・炎症や感染症などを疑います。
以上のように主に重度の静脈性浮腫や感染症、炎症などは早期に治療が必要になります。
参考文献・・・正しいリンパ浮腫の診断、治療 著 広田彰男
今回はこれまでです。次回は安全にできる、日常のむくみのケアをお伝えします。
少し、眠たくなる内容でしたね。長文失礼しました。